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松・竹・梅 の【 松 】 episode1


2017年10月1日(日)、東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座に行ってきました。

セミナーのプログラムは以下のとおりです。

◆テーマ : 正しく知ろう!「化学療法」

1.講演①

化学療法ってどんなもの?何のため?

石黒めぐみ先生(同大医学部附属病院腫瘍化学療法外科)

2.講演②

最近話題の治療法について解説します

池田貞勝先生(同大医学部附属病院腫瘍センター)

3.がん治療update①

「がん疼痛の治療」の進歩と現状

野里洵子先生(同大医学部附属病院腫瘍センター)

4.がん治療update②

大事です!化学療法中の「口腔ケア」

古屋純一先生(同大歯学部附属病院口腔ケア外来)

5.パネルディスカッション

化学療法をしながらの生活

石川敏昭先生(同大医学部附属病院腫瘍化学療法外科)ほか

6.講演③

治療を受ける際の意思決定のサポート

三宅智先生(同大医学部附属病院腫瘍センター)

聴講者は500名近く、同大M&Dタワー 鈴木章夫記念講堂はほぼ満席でした。

 

2.講演②の内容は「免疫療法」と「プレシジョンメディシン」でした。このうち免疫療法については一部に、免疫チェックポイント阻害薬への期待に便乗するかたちで、効果不明の免疫細胞療法まで同じ「免疫療法」というくくりで、≪効果がある≫とうたっている自由診療クリニックがあります。

以下、米国のオンラインメディアBuzz Feed社の日本版サイト:バズフィード・ジャパンの2017年9月2日付トピックスから、57歳の男性患者さんの夫人の手記を紹介します。

「夫は若い主治医から、診療室・個室ではなくナースステーションの片隅で「末期の膵臓がんで、手術は無理、数か月の命」と告知を受け、深刻なことなのにとても機械的に告げられた、と感じました。ショックを受けている私たちを気遣うといったこともなく、サクサクと用件を済ませるといった感じの主治医の態度に、たいへん不信感を持ちました。「主治医を替えてほしい」とお願いしたのですが、病院からは「チーム医療をしますから」ということでやんわり断られました。外泊申請をしたことがあったのですが、「外泊して何が楽しいんですかね」と言われ、主治医の一言ひとことに傷つきました。結局、たった5カ月となってしまった闘病生活のなかで、最期を迎えるまで主治医と信頼関係を築くことはできませんでした。こうしたことも、私たちが代替医療へと向かってしまった大きな要因のひとつでした。」

「がん治療についてインターネットで検索すると、アガリクスやフコイダンをはじめ、効果のはっきりとしない免疫細胞療法・代替療法の情報があふれかえっています。書店の店頭にも、これらについてのムック本が山積みとなっています。病院と連携しているサイトだから確かなものだろう、医師が監修している本だから安心できるだろう、と信じたくなってしまいます。テレビのワイドショーでも、効果の証明されていない免疫細胞療法が紹介されていて、医師も登場して「効果がある」と話していました。その先生のホームページを見てみると、効果があったという患者さんの例が紹介されていました。膵臓がんの患者さんは1例だけだったのですが、ひとりでもたすかった人がいるんだ、と都合よく受け止めました。」

「そして≪少ない副作用で、体にやさしい効果≫と謳ったそのクリニックに、賭けてみようという思いになりました。それでも勝手に決めたわけではなく、そのクリニックから過去データを求められていたこともあって、「免疫療法をやりたい」と事前に主治医に相談したのです。主治医はフフンとせせら笑って、「データはいつまでに用意したらいいですかね?」と言っただけでした。このときもしも「効果は無いと思われるし、費用も相当かかりますよ」と、医学的な立場からきちんと相談に乗ってくれていたら、思いとどまったかもしれません。突き放された感じがしました。」

「夫が受けた免疫細胞療法は、採取した血液から免疫細胞を培養し、がん細胞を狙い撃ちする機能を強化して体に戻す、というものです。何回か通って数百万かかりましたが、途中から「これは効果が無い」と薄々気がついたものの、後悔はしていません。そのクリニックは先生から受付の女性まで、患者の日常を支えるという姿勢を見せてくれました。医師は食事療法についてもじっくりと耳を傾けてくれ、病院の主治医が「食事療法? やりたければやってみれば」と突き放したのとは全く違いました。受付の女性もやさしく声をかけてくれて、夫はクリニックに行くのを楽しみにしていました。つらい闘病生活のなかで、こころ温まる思いがしました。夫の葬儀を済ませたあと、お礼に伺ったのは病院の主治医ではなく、免疫療法クリニックでした。」

(次回に続きます。)

出典:「東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座」パンフレット

2017年10月 ほか

Responsible for the wording of this article is H.Endoh

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